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The Street of the Four Winds

'Into this cursed Street of the Four Winds, the four winds blow all things evil.'
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1日目(第2回内容日記)

一日目。




鳥は天高く飛翔して風に舞い、獣は地を縦横に疾駆して風に乗る。

感じようと、感じまいと。
全ては風と共に在る。


我もまた風に導かれるままに。
風の集う場所へと歩を進めた。

恐らくは船に乗ってきた者たちであろう。
恐らくは術か、或いは想像だにできぬ何らかの方法でこの島へやってきた者たちであろう。
取り憑かれたように、一様にその場所を目指していた。



辿り着いた所は一つの巨大な遺跡。
その入り口の前には、大勢の旅人がたむろしていた。
人、人型をした異種族、更には我と同様の異形……。
様々な姿をした者たちがそこにいた。

四つの風が、そこに彼らを運んでくるのが見えた。
そしてそれは遺跡の中へと流れ込んでいく。


“Into this cursed Street of the Four Winds, the four winds blow all things evil.”


唐突に、一つの言葉が頭を過ぎる。


そこには光ある希望と、言い様のない暗き邪悪を感じた。
誰が、何が光で、誰が、何が邪悪なのか。
それは我にはわからぬ。
風に問えど、何も答えぬ。

『己で見極めよ』

そう言っているかのようだ。


集まっている者たちが手に手に何か一枚の紙を持っていることに気がついた。
全ての『眼』を凝らし、それが何であるかを確かめる。

どうやら、この遺跡への招待状らしい。
この者たちは、招待状に応じ、『宝玉』とやらを求めてこの遺跡へ乗り込む探索者であるようだ。

我は近付こうとして、すぐにハッとし、歩みを止めた。
彼ら以上の異形の身に劣等感を感じたから、というのも理由の一つではあるが、それ以上に、我がこの場に居ることが随分と場違いのような気がしたからである。

我は招待状を受け取っていない。
つまり、招待されてはいないのだ。
この島で、ついぞ己を認識したばかりの存在に、そのようなものが渡されるはずもないであろう。

探索者たちの目から隠れるように離れた場所で思案に暮れる。

唐突に触手の一種が熱を感じた。
生物の体温である。
瞬時に全ての『眼』が背後に現れた者を捉えた。

女。

否。

女ではあるが、女の姿をした人型の何か。
人間ではないことを、眼と、風が教えてくれる。
随分と肌の露出が多いが、別段、寒さを覚えているようでもなさそうだ。
その後ろには、影に隠れるようにして立つ女が一人。
帽子を目深にかぶっていて、表情はよく読めないが、微妙に腰が引けているように見受けられる。

我は前に立つ女の、我が人間の部位において著しく違う部分に、名状しがたい気落ちを覚えた気がしたが、気のせいであろうか。

妙な視線だ。
我を異形として敵視しているわけでもない。
が、友好的な視線でもない。
たまたま出会った未知なる他者に対する警戒心でもない。
複雑なものが入り混じった視線だった。

開口一番、女は言った。


「あなた、私を知ってる?」


“?”

意味が分からず、我は黙って首を傾げるばかりだ。
初対面の相手に対する問ではない。
それとも、余程に有名な女なのであろうか。

答えぬ我に、女は繰り返した。

「知っているか、と聞いているんだけど?」

“識らず”

一言、そう答えると、女は「そう」と答えて頷いた。
何だったのだろうか。

風が絡み付いてくる。
頭の中に、ぼんやりと何かが浮かんだ気がした。
我の記憶のどこかに、この女と、この女に似た誰かの姿があるような、無いような……。

判然としない。
別の誰かかもしれないし、記憶違いかもしれない。
そもそも、我は生まれたばかりではないか。

“我に何用か”

問い返す。

「ん?ああ、そう、用、用ね。
面子が足りないのよ、あなた一人?」

“面子?”

「探索のよ。あなたも遺跡探索に来たんでしょ?」

女は遺跡を指差して言った。
我は違うと答えようとしたが、女は畳み掛けるように話を続けた。

「困ってたのよ。二人でもいいんだけど、やっぱり三人のほうが何かと助かるじゃない。やっぱり。
だから誰かあぶれている人を探してたのよー。
いやー、ラッキーねー。
わりとあっさり見つかって!ねぇ、エリア?」

女は背後の女に同意を求める。
背後の女は済ました顔で頷いたが、心なしかその顔が青ざめて見える。

“いや、我は……”

「さ、そうと決まればさっさと支度するわよ。
外で食糧とか買えるから。
ほら、行くわよ」

女は触手の一本を掴んで引っ張る。

“ま、待て。承知した。
己で歩ける。痛いゆえ引っ張るな”

痛みに抗議しつつ、我は流されるように承諾した。
別段、そのことに後悔は無い。

この女には我の姿に怯え一つ見せぬ。
恐れというものを知らぬのであろうか。

だが、ただ一つ。
女の強引な言葉と行動に引っかかるものを感じた。
何かを隠そうと、誤魔化そうとしているかのような……。


風は何も答えない。


「ああ、ゴメンゴメン。
そうそう、私はシーリス。この子はエリア」

「………よろしく」

後ろに隠れていた(としか思えない位置にいる)女は、済ました顔でそう言ったが、やはりどの『眼』で見ても顔色が悪いし、どうも腰が引けているし、何か震えている気がする。
我を恐れているのであれば、恐らくは正常の反応であろう。


「んで?
あなたの名前はなんてゆーの?」





我はただ、『*』になりたかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

遺跡というのに、外と変わらぬ。
なんという不思議な場所であろう。

流れる水の向こうに階段が見えた。
通れると思い、渋る仲間たちを押し切るように進むことを主張したが、思いの外深く、そうはいかなかった。
何かあるかと思ったが……そう甘くは無かったか。

これだから生まれたては、というような顔でシーリスに苦笑された。


なぜか料理担当にされた。
我に何を作れというのだ。
食材はパンくずとおいしい草。
これでどうしろと。

とりあえず水で洗って切り、形を揃えて盛り付けてみた。
……サラダ、というらしい。
簡単だったが、やたらと物足りない。

空いた時間に、風と戯れてみた。
やはりこの時間は不思議と落ち着く。
気がつけば宙に薄く、人型の何かが浮いているのを見つけた。

どうやら下位精霊らしい。
司る力は『そよ風』。
手を差し伸べれば腕から我が体を滑るように絡まり、やがて消えた。
体調が充実している時であれば、呼び出すこともできるであろう
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